ほくろじゃないかも!?メラノーマ(悪性黒色腫)に要注意!
手のひらや、足の裏にほくろはありませんか?もしあるとしたら注意が必要です。
「ほくろ」とにている皮膚がん「メラノーマ(悪性黒色腫)」
ほくろは誰にでもありますが、皮膚がんのひとつである「メラノーマ」と非常によく似ています。
似ている理由とメラノーマの怖さ、注意点について紹介します。
ほくろとは?
誰の皮膚にもあるメラノサイトと呼ばれる細胞が集まったものが「ほくろ」です。
周囲の皮膚より高い密度になるため、メラノサイトの色素によって黒く見えたり、青く見えたりします。
ほくろは母斑の一種であり、厳密には皮膚の奇形のひとつとされてます。WHOの分類では良性腫瘍として扱われています。普通の状態であれば健康面においてはまったく問題はありません。
メラノーマ(悪性黒色腫)
「メラノーマ(悪性黒色腫)」は、メラノサイトから発生する悪性腫瘍です。
聞きなれない病気ですが実はとても怖い病気のひとつです。
「ほくろ」の元であるメラノサイトが癌化したものが「メラノーマ」であるため、ほくろとメラノーマは見た目は非常によく似ています。
素人が見た目だけでほくろかメラノーマなのか判断することは非常に難しいです。そして、メラノーマは急激に悪性化していきます。
そのため、ほくろと思っていたら実はメラノーマで、気づいた時には手遅れになっていたということも少なくありません。
メラノーマ(悪性黒色腫)ってどんな癌?
メラノーマ(悪性黒色腫)は、メラノサイト細胞が存在する皮膚、眼窩内、口腔粘膜などに発生する悪性腫瘍です。
大きく分類すると末端黒子型、結節型、表在拡大型、悪性黒子型の4つに分かれます。
末端黒子型黒色腫
末端黒子型黒色腫は、手や足など四肢の端にできるメラノーマです。日本人でもっとも多いのがこの末端黒子型黒色腫です。全体の5割以上を占めます。
すぐには大きくならず、数年かけて大きくなっていきます。最終的にはジュクジュクとした潰瘍になります。
紫外線が原因になることは少なく、主に継続的な刺激で発生しやすいメラノーマです。
初期に見つかることが多く、比較的治りやすいメラノーマです。
結節型黒色腫
結節型黒色腫は、日本人に2番目に多いメラノーマです。全体の3割がこのタイプです。
末端黒子型黒色腫と違い、突然硬い結節(イボのようなもの)ができます。
メラノーマの中でも悪性度が高く、急激に悪性化するため大変危険です。
転移もしやすいため、とにかく早期発見が重要なメラノーマです。
表在拡大型黒色腫
表在拡大型黒色腫は全体の2割を占めるメラノーマです。
主な原因は紫外線です。メラニンの生成量とも関係があるため人種間で発生率が違います。
メラニン色素の少ない白人では全体の6割を占めますが、黄色人種の日本人はメラニンの生成量が多いため全体の2割と少数です。
日本人でも色白だったり、いつも日焼けをしている人は要注意です。
腕や足、首、顔など日焼けをする場所であればどこでも発生するメラノーマです。
悪性黒子型黒色腫
悪性黒子型黒色腫は日本人では一番発症率が少ないメラノーマです。
シミのようなものが時間をかけてだんだん大きくなり、隆起していきます。
高齢者の顔にできることが多いですが、ゆっくり悪性化していくため早期治療がしやすいメラノーマです。
手のひら、足の裏はメラノーマができやすい
メラノーマは良性の母斑(ほくろ)が、変化して悪性化するとの考え方が有力ですが、それとは無関係に発生するものもあります。
日本人での年間の発生患者数は1500~2000人程度とされています。この数は欧米人の1/10の割合ですが、近年は増加傾向にあります。
好発部位(できやすい場所)は、足の裏、体、顔、爪などです。
日本人には末端黒子型のメラノーマが多いため、足の裏や手のひらは注意が必要といわれています。
できやすいのに加えて、手足は物をつかんだり立ったりする時、皮膚が刺激を受けます。そのため、できたばかりのメラノーマが急激に悪性化する可能性があります。。
もし、手や足の裏にほくろのようなものが突然できたら、注意をするべきです。可能であれば大きさ測ったり、写真を撮っておきましょう。
※欧米では、ほくろの数や大きさの変化をみるために全身の写真をとって経過観察をします。
観察するポイントとしては
- 急激に大きくなっていないか
- 大きさが5mm以上ないか?
- 色が薄くなったり、まだらではないか?
- いびつな形をしていないか?
- 出血をしていないか?
- 表面がでこぼこだったり、じくじくしていないか?
- 大きく盛り上がっていないか?
などです。
メラノーマ(悪性黒色腫)は、見た目が重要です。大きさや色、形は大きな判断材料です。
写真などもとってしっかり記録を残しておけば、ちょっとした変化にも気づくことができ、受診時にも医師に確認してもらいやすくなります。
これらのセルフチェックは大切ですが、もっと大切なのは、心配であればすぐに皮膚科を受診することです。
気になったらすぐに見てもらう
だいぶ気になってきてから受診では手遅れです。ちょっと気になるなぁ・・の時期でも迷わず受診しましょう。
「単なるほくろだったら恥ずかしいなぁ」とか「たぶんほくろだろう」という考えはやめましょう。
間違っていたとしても皮膚科で「心配性だなぁ」と思われることはありません。
それだけメラノーマは進行が早く、すぐに取り返しのつかない状態まで進んでしまう怖い悪性腫瘍なのです。
メラノーマの検査
皮膚科の専門医が「良性のほくろ」か「悪性のメラノーマ」か判断するときは、大げさな検査はしません。
ダーモスコープという専用のルーペでじっくり観察します。皮膚に専用のジェルを塗って、辺縁に浸潤像がないか、メラノサイトの色素の分布などを調べます。
もしおかしいと感じたら、大きな病院を紹介されます。
一般的な腫瘍であれは、生検(組織の一部を切り取って病理検査を行う)にまわしますが、メラノーマは生検によって一気に体中に広がる可能性があるため、慎重になる必要があります。
必ず皮膚科を受診しよう
皮膚にできたできもの(腫瘍)を見る診療科としては、皮膚科と整形外科があります。
メラノーマかどうか調べてもらいたいのであれば、必ず皮膚科専門医を受診してください。
ダーモスコープでの正しい診断には、経験と知識が必要です。メラノーマは、数が少ないため、一般開業医では経験したことがない可能性もあります。整形外科ならなおさらです。
まずは皮膚科が第一選択です。
メラノーマの治療と検査
メラノーマの治療の第一選択は外科的な切除(手術で取り除く)です。メラノーマの場合は一般的な腫瘍よりも広い範囲の切除が必要です。
進行具合にもよりますが、メラノーマの周囲3cm程度外側まで余分に切除します。それだけ、メラノーマを刺激しないように注意深く切除する必要があるのです。
リンパ節の検査
メラノーマは、転移もしやすく非常に早く体中に広がります。そのためリンパ節転移の評価も必要です。
手術前はPETやCT検査などを行い遠隔転移、リンパ節転移などを調べます。
それに加えて手術前には、センチネルリンパ節シンチグラフィを行い病変部から一番近いリンパ節の同定を行うことがあります。
また、手術中に色素法と呼ばれる方法で一番近いリンパ節を同定して、迅速生検によって転移の有無を確認します。
手術後は、化学療法を行い転移の予防を行います。しかし、抗がん剤も放射線治療には抵抗性のためあまり効果はありません。
子供のメラノーマ
子供(乳幼児)のメラノーマの発症の可能性は極めて少ないといわれていますがゼロではありません。母親由来の悪性黒色腫や巨大先天性母斑など、メラノーマ発症のリスクをもっている場合があります。
また、生まれたての赤ちゃんにはほくろがあることは稀ですが、3歳ごろから体にほくろができやすくなってきます。
大人の場合と同じように、大きさや色、形に十分注意してあげてください。特に足や手、そして爪にできたものは要注意です。
爪はわかりにくいですが、ほくろというより黒いスジが入ります。生まれてしばらくは、小児科などに通う機会も多いと思いますので、気になる場合はその都度、小児科医に相談しましょう。
迷いは禁物。気になったらすぐに受診を!
メラノーマは、あまりなじみのない病気ですが、場合によっては肺がんや脳腫瘍、内臓腫瘍などよりも、進行が早く、治療の選択肢が少ない怖い病気です。
気になるけどそのうちに・・・という油断が命取りになるかもしれません。
少しでも心配なら皮膚科の受診を強くおすすめします。
リスクを知りたいなら遺伝子検査
ほくろがたくさんあっても必ずメラノーマになってしまうわけではありません。
ただ、ほくろが多い時点でメラノサイトの働きが他の人より活発なのは確かです。
最近では、癌ができるかどうかは遺伝的な要因が大きいことがわかってきました。
がんはもともと正常な細胞が変化したものです。遺伝的に変化しやすい性質をもっていれば、他の人より癌になる可能性が高まります。
つまり同じ遺伝子をもつ家族に癌の人がいれば、それだけで癌になるリスクが高いといえます。
最近では遺伝子検査は特別な研究機関に依頼しなくても、民間の会社に郵送するだけで行うことができます。
リスクを知っておけば健康に過ごせる
検査の結果リスクが高ければ、より注意して生活することで癌になる可能性を減らすことができます。
例えば・・・
- 肺がんのリスクが高い→禁煙する。
- 胃がんのリスクが高い→毎年胃カメラ検査をする
- 子宮頸がんのリスクが高い→検診を積極的に受ける
- メラノーマのリスクが高い→紫外線を避ける。気になるほくろがあればすぐに皮膚科を受診する
などです。
もし、体にほくろが多いのであれば、遺伝的にメラノーマになりやすいのかどうかを調べることもできます。
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最近では遺伝子が「がんのなりやすさ」に大きく関係していることがわかってきました。
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