画像を使った認知症検査
認知症の診断薬として2014年1月にdatscanが発売されました。
認知症検査に新たな風が吹く!脳疾患診断薬「dat Scan」ついに発売開始このDat Scan以外にも、病院ではいろいろな画像検査が行われています。
脳血流シンチグラフィ
脳の血流を評価する脳血流シンチは2種類あります。
123Iという放射性核種を使ったIMPと99mTcいう放射性核種を使ったECDです。
どちらも数十年前から使われている信頼性の高いお薬&検査です。
123I-IMP(N-イソプロピル-4-ヨードアンフェタミン)
123Iという放射性核種を使ったお薬です。
脳血流シンチは脳に流れ込む血流の評価をするわけですから、薬が脳の組織の中まで到達しなければなりません。
脳の血管にはバリアがある
しかしデリケートな脳の組織を守るために脳の動脈にはBBB(blood-brain barrier)と呼ばれる構造があります。
ここは限られた物質しか通ることができません。IMPはBBBを通り抜けられるように分子量や成分を工夫してあります。
静脈から体内に投与されたIMPはいったん肺に集まります。そしてそこからゆっくり動脈に送り出され脳に到達します。
脳に到達してIMPはBBBを通り脳の中に入りそこで、周辺の細胞と結合してとどまります。
当然血流が多いほど到達するIMPも多いわけですから、その量を調べることで血流評価をすることができます。一般的には約30分かけて脳全体の撮影を行います。
99mTc-ECD
99mTcという核種を使った薬です。工場で作った製剤と現場で作るキットが発売されています。
キットは緊急使用にも対応可能となっています。99mTcは放射線のエネルギーが減衰するのが比較的早いため検査時に多くの量を使うことができます。
そのため撮影時間も短く高解像度で撮影ができます。ECDもIMPと同じようにBBBを通過できるように分子量と成分が工夫されています。
脳の中に入ったECDは酵素に分解されBBBを通過できない成分に変化します。この性質によってECDは脳の組織内に取り残されるため、その量で相対的な脳の血流を評価することができます。
一般的には約20分かけて撮影が行われます。
どちらの製剤も脳の血流の評価が行えますが、より鋭敏に低下がわかるのはIMPだといわれています。ECDにも短時間で高解像度で撮れるというメリットもあります。
どうやって診断するのか?
大きな病院では放射線科の医師が画像をみて診断します。放射線科医師が常駐していない中小規模病院では各診療科の医師が診断することが多いです。
画像は基本的には3方向から見た断面像です。20~30分かけて脳全体のデータをとっていますので、撮影後に任意の断面で画像を作ることができます。
この画像を見て脳の血流が低下している部分を見つけ出してそのパターンや程度から診断を行います。
認知症の治療は、特効薬があるわけでもありません。長期間かけて気長にやるしかありません。当然患者本人だけでなく家族の協力もすごく大事です。
本人にも家族にも認知症だということをしっかり認識してもらって、納得のうえ治療を始める必要があります。
そのために、統計学的手法を用いた補助診断を使って、わかりやすく説明できるように工夫されています。
統計学的手法を用いた補助診断:E-ZIS
そこで、最近は統計的な手法での補助診断が普及してきています。(一番普及しているのはE-ZIS(easy Z-score Imaging System)です)
この分かりやすくというのがキモです。
まずは、健常人は脳血流の画像だけでなくMRIの画像も撮っておきます。その画像に患者さんの画像を合わせこんで比較して表示します。
これによって立体的に見ることができます。そして血流が落ちているところは青く表示します。
これを見れば一目瞭然。患者さんも家族も納得して治療に協力的になってくれるというわけです。
低下している場所が分かりやすく表示されるためそのパターンでたくさんある認知症の中からどれかをある程度推測することも可能です。
datscanとの役割の違い
datscaは主に、パーキンソン症候群やレビー小体型認知症の診断に使用されます。他の似たような症状を出す認知症の可能性があるかどうかの診断に大きな役割を果たします。
一方脳血流シンチは、血流低下のパターンからどの認知症の可能性があるかを示してくれます。また加齢による低下なのか、病的な低下なのかの判断に役立ちます。
まとめ
この方法はあくまで補助的な使い方しか認められておらず、診断自体は医師が行うこととされています。しかし患者さんや家族の方に説明する時にはとても役立つツールです。
何かとわかりにくい説明が多い医療の世界ですが、こういうツールがもっと普及するといいですね。
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